PENTAX67ll


 長い間モデルチェンジなしに、第一線で活躍するプロカメラマンから絶大な信頼を得ていたASAHI PENTAX 67が昨年ついにモデルチェンジし、PENTAX 67-2となった。
(llが表記できないため-2と表記)
 定評ある使い勝手はそのままに新機能を盛り込み、より使いやすくなった。

 初代ペンタックス 67は1968年のフォトキナで初めて発表され、翌69年の7月に発売された。
 その後ミラーアップ機能の改良やロゴの変更など一部マイナーチェンジはしたものの約30年近くも大幅なモデルチェンジなしに多くのプロカメラマンや写真愛好家に愛用され続けてきたカメラである。
 爆発的な売れ行きを示した「ヒット商品」というわけではないだろうが、常に一定の固定ファン層に支えられ、「現行機種」として生き残ってきたカメラであるといえよう。長い間モデルチェンジしなかった理由の一つにはユーザー側からの要望で、モデルチェンジしないで欲しい、という声も随分とあったようだ。
 普通なら、ああして欲しい、こうして欲しいといった「改良」を望む声のほうが大きくなるはずである。それが無かったというのは、それだけ初代ペンタックス67がすでに完成されたカメラであったともいえる。
 別の言い方をすれば、他にも中判一眼レフは数多くあるが、ある者にとってはペンタックス67しか選択肢が無い、という場合もあるわけである。それほど独創的なコンセプトに支えられてきたといっても過言では無い。

☆初代ペンタックスが愛されたワケ

 ペンタックス67の独創的なコンセプトと言われてすぐに思い浮かぶのは、35mm一眼レフをそのまま巨大にしたようなペンタプリズムが組み込まれたあの、ボデイであろう。
 多くの中判一眼レフはハッセルブラッドに代表されるようなウエストレベルファインダーを基本として上から覗き込むようなホールディングのしかたをするのが普通である。それに対してペンタックス67は35mm一眼レフの使い勝手をそのまま中判サイズで実現した。
 この単純明快なコンセプトは実はありそうで他社製品にはなかったもので、しかもその後約30年にわたってモデルチェンジなしに独自の路線を歩ませることになるものであった。

 しかし、こういったデザインや使い勝手だけでは30年近くも現行機種として生き残れた理由にはならないだろう。
 もちろん交換レンズ群が充実しているなどのシステム全体のことや耐久性、信頼性といったこともロングセラーを続けてこられた理由としてあげられるだろう。しかし、本当の理由は案外ささいなことで、ちょっとした技術的なあるいは構造上の違いが他機種では追従できないペンタックス67独自の撮影領域を実現しているような気がする。
 筆者が思うところ、それは、あの"巨大"なフォーカルプレーンシャッターである。
 大部分の中判一眼レフ(特に6×7cmサイズ以上)がレンズシャッターを採用するなかで、なぜ一見不利とも思われるフォーカルプレーンシャッターなのか?シャッター幕が大きいだけにシンクロスピードも遅く、1/30秒以下でないとストロボをシンクロさせることは出来ない。デーライトシンクロなどには不利である。
 ところが、レンズシャッターでは実現できない圧倒的有利な点もあり、それは比較的容易に高速シャッターを実現できることである。つまりフォーカルプレーンシャッターの特徴である先幕と後幕のつくり出す開口部分のスリット幅を狭くすればよいのである。通常レンズシャッターでは1/400秒〜1/500秒が最速であるのに対し、ペンタックス67では1/1000秒を実現している。このことはつまり、スポーツ写真や報道写真など主にフィールドへ出て活躍する機会の多いプロカメラマンにとっては唯一無二の選択肢となりうる場合があるということである。

☆満を持してのモデルチェンジ

 そのペンタックス67が満を持してのモデルチェンジを果たし、PENTAX 67 となった。
 長い間ロングセラーを続けてきた機種だけに、交換レンズなど従来システムとの互換性を取りながら自動露出など新たな機能を盛り込んでいる。しかし、ユーザー側にとっては「何が変わったか」よりも「何が変わらなかったか」ということが重要かもしれない。

 例えば過去にマミヤRB67がマミヤRZ67にモデルチェンジした時にレンズシステムも変わってしまったという経緯がある。(結局RB67もRB67proSDとして生き残り2つのラインナップになってしまった)

 PENTAX 67-2はレンズマウントもレンズシステムも全く変わっていない。(もちろんフォーカルプレーンシャッターが採用されている)
 初代ペンタックス67ユーザーがPENTAX 67-2に買い替えても従来のシステムはそのまま生かせるようになっている。
 外観上大きく変わったのはシャッターボタン位置とグリップ形状である。いままでは特にグリップ部といったものはなかったのでグリップが安定し、ホールディングしやすくなっている。
 そのグリップ部には3Vリチウム電池(CR123A)が2個収納されている。初代ペンタックスで採用されていた4LR44(もしくは4SR44)という電池はどちらかというとカメラ専門店などへ行かなくては手に入れにくいものだったが、今度のCR123Aは最近のカメラなどでは多く採用している電池なのでコンビニなどでも比較的簡単に手に入れることが出来るタイプのものである。

☆PENTAX 67-2の新機能

 PENTAX 67-2はファインダーなしのボデイのみの状態で\220,000(希望小売価格)である。
 もし買い替えであればボデイのみ新規購入し、ファインダーは手持ちの旧タイプを利用する、という手もなくはない。しかし、PENTAX 67-2の新機能を最大限利用するためにはAEペンタプリズムファインダー67-2が必要になる。
 このファインダーを取り付けることにより絞り優先自動露出が可能になり、6分割測光、中央重点測光、スポット測光の3種類の測光方式を切り替えて選択できるようになる。
 特に6分割測光は撮影画面の6か所を独立して測光し、それぞれの素子から得られる測光データを元に最適な露出を判断するというものである。こうした分割測光あるいはマルチパターン測光と呼ばれるやりかたでの露出の判断の仕方は各社各様、微妙に違うのだろうが、PENTAX 67-2では比較的中央部重点測光に近いアルゴリズムを採用しているようだ。
 実際今回のテスト撮影でも使ってみたが野外での通常のスナップ撮影では殆ど露出補正なしに適正露出が得られた。
 自動露出が組み込まれたことによって、ファインダー内にもシャッタースピードなどの情報がLCD表示されるようになっている。
 残念ながら標準仕様では絞り値の表示はない。例えば高い位置でアイレベルでカメラを構えた時などは絞り値を確認しづらく、このような時には絞り表示も欲しくなるものである。その場合はサービスセンター経由で機能を変更してもらうと、撮影枚数表示に替え、レンズのF値を表示するように出来る。
 他にもこの「カスタム機能」を利用すれば、シャッター速度を1/2EVステップで設定できるようにしたり、測光タイマー時間の変更などが出来る(いずれもサービスセンター窓口経由)。

 また、PENTAX 67-2の電子シャッターはマニュアルでは1/1000秒〜4秒、B(バルブ)だが、AEペンタプリズムファインダー 67-2による絞り優先AEでは1/1000秒〜30秒までの間を無段階に制御している。
 長時間露光では通常のB(バルブ)露出の他、パワーセイビングタイム露出という機能を使うと露光中の電池の消耗を防ぐことが出来る。
 フォーカシングスクリーンも自在に交換可能になり(従来はサービスセンター経由で交換)、撮影用途や使うレンズ(標準系、望遠系)により8種類が用意されている。従来の砂目からナチュラルブライトマットになっている。ファインダーそのものも明るくなっているので(ペンタプリズムに銀コーティング、クイックリターンミラーにアルミ増反射コーティングなど)、全体としは従来より60%明るくなっている。
 その他AEペンタプリズムファインダー 67の細かな特徴としてはアイピースシャッターや視度調整が付いたことだろう。またボデイ側と連動してメモリーロック、いわゆるAEロックの機能もある。
 ボデイそのものの特徴としては、多重露出が可能になったことや、セルフタイマー機能、220フイルムを使用したときの撮影可能枚数が従来の20枚から21枚になったことなどもあげられる。

☆豊富な交換レンズ群

 従来からのペンタックス 67の魅力の一つは豊富な交換レンズ群である。特に超望遠系の明るいレンズには強く、フィールドを中心に活躍するプロ写真家に根強く支持されてきた所以でもある。
 今回のモデルチェンジでもそれらの「財産」をそのまま受け継ぐことが出来るのが強みだろう。また、フォーカルプレーンシャッターを採用していることのメリットとして、レンズシャッターを組み込んだレンズに較べて(シャッターが無くても済む分)安価にあがることも特徴だ。
 1本だけレンズシャッターが組み込まれたレンズもラインナップしており、このLS165mm F4は1/500秒までストロボ同調可能なのでファッション系のデーライトシンクロの撮影などにも対応出来る。
 今回のテスト撮影に使ったレンズで同じ焦点距離の165mm F2.8というレンズを使ってみたが、6×7cmサイズで165mmという絶妙の画角とF2.8という明るさは案外気持ちの良いものであった。

☆PENTAX 67 のユーザー層

 今回、テスト撮影や取材を通じて改めてPENTAX 67 の魅力に触れることが出来たわけだが、モデルチェンジによって新たなユーザー層が開拓できるか?というと甚だ疑問である。むろんメーカー側もそんなことは期待していないかもしれない。今まで同様、ある一定のユーザー層に支えられていくのではないだろうか?
 例えば、商品撮影などコマーシャル系のフォトグラファーにとっては「ポラ」が使えないのが最大の弱点である。(それでもどうしてもという人はサードパーティー製のポラロイドパック・ボデイを利用していることも知っているが、、、)
 「ポラ」が使えないと困る、というカメラマンは多いはずで(筆者も含めて)、それでもそういった声は切り捨ててベーシックな使い勝手にこだわったメーカーはむしろ潔いと思う。
 「変わらないことの魅力」に対して心から拍手を送りたい。
 自然と他メーカーとの棲み分けが出来ているし、これからもPENTAX 67 の役割は明確にあるだろう。


コマーシャルフォト99年5月号掲載

発売当時の古い記事でしたが、お読みいただきありがとうございました。
PENTAX67-2はいまだに現行商品です。

Works Indexへ   BlogTopへ



update 99.11.30
Hiroshi Takezawa