フジフイルム TX-1


☆異色のカメラTX-1

 FUJIFILM TX-1は135フイルムを使いながら、通常の135サイズ(24mm×36mm)とフルパノラマサイズ(24mm×65mm)を切り替えて使える異色のレンジファインダーカメラとして登場した。

 FUJIFILM TX-1は外観的にはライカなどと同様、レンズ交換式・高級レンジファインダーカメラであるが、パノラマサイズであるため、若干大きめの存在感のある仕上がりになっている。
 残念ながら筆者はライカ愛用者ではないが、実際手にして見るとあの(昔ながらの)カメラらしい重量感と手触りが蘇ってくる。
「昔ながらの」と言ったが、もちろん中味は最新の技術が盛り込まれ、ボデイ外装はチタン素材である。

 最近のカメラはプラスチックっぽい手触りのものが多く、お手軽に気楽に撮れるカメラが一般的だが、古くはカメラといえば初心者用もプロ用もなくあるのは「高級な大人の道具」としての「カメラ」だけだったはずだ。昨今のように不景気でモノが売れない時代だからこそ本来的な意味でのカメラの魅力にあふれ、「手にする歓び」を提供してくれるTX-1は案外受け入れられるかもしれない。
 使い勝手も上々で、昨今のコンピュータ化されたカメラのように取り扱い説明書を隅から隅まで読まないとあまりに盛りだくさんの機能を使いこなせない、ということはない。いたってシンプルで多少のカメラ知識があれば、手にしただけで大体の機能と使い方はわかってしまう。

 それでは、もう少し詳しくその中味をみてみよう。

 まず、その最大の特徴であるパノラマ機能について、、。
 よくある普及型カメラのパノラマというのは、35mmの上下をカットしてパノラマっぽくみせるという疑似パノラマであることは読者の方々も承知だと思う。このTX-1は35mmの約2コマ分を使うフルパノラマサイズである。実際には24mm×65mmのサイズなので(正確に2倍だったら24mm×72mmになるはず)135フイルムの36枚撮りを使って20枚撮影可能である。

 フイルムの途中でも標準サイズとパノラマを切り替えることが可能で、その場合も正確に残り撮影可能枚数を表示する。
 これはフイルムを最初に巻出してから順次パトローネの中へフイルムを給送していくというプレワインド方式により、あらかじめフイルムの「尺」を計っているので可能になることでもある。
 ちなみに通常のサイズでフイルムのパーフォレーションの穴は8個分だが、フルパノラマ時は正確に14個分になる。

   同時に発売された専用交換レンズはスーパーEBCフジノン「TX45mm F4」と「TX90mm F4」の2本である。

 フルパノラマのイメージサークルを実現するため通常の35mmレンズよりも一回り大きいが中判レンズほど巨大ではない。いずれもクリアでシャープな画質を実現している。広角系のTX45mmではフルパノラマ時には通常の35mmの横長方向でf=25mm相当の画角をもっている。これはかなりワイド感もあり、疑似パノラマとは一味違う高画質を実現できている。ただ、このTX45mmは周辺光量が若干落ちるようで、微妙に横長方向の周辺がアンダーになる。かといって周辺のピントが甘くなるわけではないので、風景などを撮ったときなどは「良い味」にもなると思う。好みの問題かもしれないが、筆者はむしろこのままのほうが味があって良いと思っている。コマーシャル用途などのように周辺までフラットにいきたい場合はTX90mmが良いだろう。

 次ぎに、これらのレンズとボディとの連携である。レンジファインダー式なので連動距離計を使った二重像合致式のフォーカシングである。今どきのオートフォーカス機能は、無い。二重像合致部分は実像タイプのため見やすく、ファインダーを覗きながらレンズのピントリングを廻していくときの滑らかな回転と程よいトルク感が気持ち良い。また、TX-1の独特な横長ボディは距離計精度を増すのに役だっているし、アルミダイキャストボディとチタン外装による高剛性は単なる堅牢性だけではなく、レンズの繰り出し量をアナログ的に計って測距するというやりかたを実現するための精度を確保するには不可欠のものでもある。
 さらに、レンズ交換に連動しブライトフレーム、ファインダー接眼レンズが切り替わり、ファインダー倍率が自動補正されるようになっている。
 露出もいたってシンプルで「絞り優先AE」か「マニュアル」である。一眼レフではないので開放測光をする必要はなく、絞り込まれた状態で測光する。じゃあどこでどうやって測光しているのかというと、レンズを通過した光をシャッター幕面で中央部重点平均測光している。マニュアル時にはファインダー内に「−●+」が表示され、適正露出を自ら設定していくことになる。また、絞り優先AE時の露出補正は右手側の露出補正ダイアルで0.5EVステップで+−2EVまで補正できる。
 また、最近の高級機には標準になりつつある(?)オートブラケッティング(AEB)機能が付き、0.5EVか1.0EVでノーマル→アンダー→オーバーと自動補正しながら撮影できる。露出補正ダイアルやISO 感度設定と組みあわせて使えばさらに細かな設定も可能になる。
 シャッターはTX-1専用フォーカルプレーンシャッターである。もちろん縦走りだ。本来なら1/8000秒まで使えるような精度のあるものだがフルパノラマという大きい特殊なサイズであるため、あえて余裕をもって1/1000秒までとしている(、ということらしい)。シンクロスピード(X接点)は1/125秒以下である。
 アクセサリー類も高級感を重視し、カメラケースやストラップは牛革製、ウォールナット材を使ったウッドグリップなどがオプションで用意されている。まさに触感のよいカメラだと言える。

 さて、マニア的に気になるのはこのカメラがハッセルブラッド社との共同開発によるもので、日本以外ではハッセルブラッドX Panという製品名で販売されることだろう。日本国内ではFUJIFILM TX-1のみの販売になるので、もしどうしてもハッセルブラッドのブランド名のついたものを手に入れたかったら今のところ平行輸入などに頼らざるを得ないだろう。
 最後にフルパノラマからの現像・プリント時の注意点を紹介しておこう。プロカメラマンのようにポジで撮影されたものを専門のプロラボなどで現像する場合はほとんど問題ないが、一般のDP 店などで現像・プリントする際はフルパノラマ撮影であることをあらかじめ伝えておく必要がある。そうしないとフルパノラマ画面の途中で切断されてしまう場合がある。プリントもミニラボと呼ばれる自家処理機をそなえた小さなお店ではプリントできず、大手工場へ集配された後、処理されることになる。当然1時間後に仕上がりというわけにはいかず、数日かかることになり、料金的にも割高になる可能性があることを承知しておかなくてはならない。
 フルパノラマという特殊なサイズであるがゆえの不便さもあることは認めなくてはならないが、同時に特殊なサイズでしか撮れない作品もあるはずで、それをどうアドバンテージに結びつけるかはユーザー次第といったところだろうか?例えば、パノラマ縦位置写真なんていうのも案外面白いかもしれない。


コマーシャルフォト98年11月号掲載原稿より

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update 99.11.30
Hiroshi Takezawa